顎関節脱臼

バンビ歯科 院長 森川富夫

梅雨入り前の暑い毎日が続いています。久しくお会いしてなかった患者さんも

検診、清掃希望でお見えになっています。Hさんもそのお一人でした。

「しばらくぶりにお掃除をしてもらおうと思って!」「分かりました、ところで

ご主人様はお元気ですか?」「元気にしていますが、先日胃カメラの時に顎外しちゃって。」

「えっ?」歯科治療の時に顎が外れる「顎関節脱臼」は稀にあります。

「胃カメラの検査時ですか~」と話しているうちに大昔の記憶が

蘇ってきました。それは私が大学卒業して半年くらい経ったある日

「午前中用事あるから君達で診てあげて」と院長から言われました。

確かに今の時代と違い、当時は学生の最終学年で臨床実習も積み、勤務して半年も経てば

一通りの処置はできました。しかし院長不在、同期と二人だけ、やる気の中にも

一抹の不安もありました。予感的中です。「今日は若い先生だけなんだね」「そうなんですよ」

と話しながら診療していたのですが……私以上に元気で治療していた友人の周りの空気が重く

どんよりしています。振り向くと私に向かって彼が「顎が外れた」と手振りで知らせてきました。

脱臼の修復のやり方は知識としては知ってはいますが、実習なんてしたことありません。

さて困った!そんな時診療室の片隅の頭蓋模型が目に入りました。私は模型と対面し、

ここに指を置き、手の動きはこう、と何度かやってみました。フーと息を吐きながら、オーケーいつでも替われる。

そんな時「入った~」と横から友人の声、流石です。しかし後から彼が言うのには

「頭が真っ白になったけど、森川君が頭蓋模型を触り始めたのを見て落ち着けた」

原因は麻酔下における長時間に及ぶ奥歯の神経処置で、たまに外れた経験があったみたいです。

それ以降二人とも心の片隅に置き注意したのは無論です。

件の同僚は今は私の主治医であり、私は彼の主治医。