Aさんからの電話

この季節になると「一年生の君たちに」との書き出しで毎年このコラムを書かせて頂いてるのですが、

今年はそうもいかなくなってきました。昨日は東京で新たに100人以上の感染者が確認されたみたいです。

芸能人の方やスポーツ選手、身近な誰かが感染してても、驚かない時代に入ってきてるのでしょうか?

当医院も年配の方を始めキャンセル、様子見の患者さんが増えてきています。

情報の多さに惑わされる事無く、冷静にと………と続けようとしましたが、一本の電話が入ってきました。

「先生!お世話になっているAです」30年来の患者さんAさんでした。

「Aさん!お久しぶり今日は日曜、休診日ですよ、どうされました?」

「実は今、神戸の娘の所にいて、又入れ歯をなくしちゃったのよ、それで又先生に作ってもらえないかと」

Aさんはこれで三回目の紛失です。「あれまーそれは大変だ、いつお戻りですか?、」

「それがー……あれ!先生の声が聞こえなくなってきた」こちらか?先方か?回線が変です。

「住所を伝えるから出来れば送って貰えないかしら?」すったもんだの結果ようやく状況が分かり、

Aさんのお願いも理解できました。Aさんは病弱な息子さんと横浜で二人暮らし、娘さんは神戸にいらっしゃいます。

今回のコロナ騒動で親子で神戸に引っ越しされたみたいです。慣れない地でどたばたし、無くされたみたいで、

入れ歯を何回も作った私なら何とか作って、送ってもらえると思い電話されたみたいです。

クラウンやインレーなどは歯型があれば何とかなりますが、入れ歯の場合は模型を割り出し作るので不可能です。

断っておきますがAさんは少々慌てんぼですが、いたってしっかりされて、楽しい方です。

横浜の家も処分されたので、私の関西で開業している後輩の歯科を紹介しました。

私は今夜にも後輩に「明日Aさんという方から連絡入るから宜しくね」と電話を入れるつもりです。

何十年来の多くの患者さん達のように引越しの際などに必ず連絡や挨拶はされるはずのAさんが

大慌てで地方に!事態の深刻さの再認識と、もう会って楽しく会話することもないんだと、寂しさを感じます。

後は後輩に託します。